
先日、他現場に応援に行った。
PC板(コンクリートの板)をタワークレーンで揚重する際、歩道の上を通過するので、両サイドの歩行者を止める仕事だ。
その時に一人、とんでもなく命知らずの男性歩行者がいた。
私が「すみません、少々お待ちください」と丁寧に頭を下げると、「どけ!」と言って私の腕を払いのけて、1トンもあるPC板の下を突破して行った。
あのPC板が落ちて下敷きになったら、間違いなくぺちゃんこだ。
死なないまでも、ただでは済まない。
想像力の欠如か?
いや、一般人は吊り荷の下に入る危険性を知らないからこういう行為に出る。
私なら、吊り荷の下には絶対に入らない。
以前、鉄筋の束をクレーンで吊っていた際、10メートルくらい上がったところで、フックが外れてトラックの荷台に落下したことがあった。
ものすごい音がして、通行人が集まって、人だかりができた。
玉掛をしていた運転手は、慌てて荷台から飛び降りて難を逃れたが、トラックの荷台に一メートル四方の大きな穴が開いた。
飛び降りていなかったら死んでいたかも知れない。
これは、誰も怪我をしていないので、労基にも警察にも報告をしていない。
つまり事故として数に含まれていない。
吊り荷が落下することは、工事現場で働いている人間はたまに目にすることだが、一般人にとっては過去に一度も見ていないはずなので、「落下することなんてあるわけない」と勝手に思っているのだろう。
確かに吊り荷が落下することは滅多にないが、落下してそれが直撃したら、死に直面する大事故になる。
今年の9月、港区のビル解体工事現場で外壁のコンクリート片が落下して、下の歩道にいた警備員が死んだ。
この時は、現場関係者の警備員だったが、以前には、足場用の下桟と呼ばれる細長い部材が約30〜35メートル下の歩道に落下し、下の歩道を歩いていた一般人の老人が巻き込まれ死んだ。
数年前にも、鉄パイプなどを入れたトン袋を8階部分からクレーンで下ろす際、約20メートル下の歩道に落下させ、接触した68歳と69歳の夫婦の肩などを骨折させた事故が起きている。
つまり、ニュースとなって世間に認知されるのは、人が死んだり怪我をした時だけだ。
建設業界では、有名なハインリッヒの法則というのがある。
- 提唱者は、アメリカの損害保険会社の安全技師であるハーバート・ウィリアム・ハインリッヒ
- 内容は、1件の重大事故の裏には、29件の軽微な事故(かすり傷など)、300件のヒヤリハット(事故に至らなかった危険な状況)が存在する。
- 別の呼び方は、「1:29:300の法則」「ヒヤリハットの法則」とも呼ばれる。
現場内も現場外も、工事現場の周辺には様々な危険が潜んでいる。
たまたま表面化しなかっただけのヒヤリハットが多数あるということだ。
警備員の誘導に従わない人間は、自分がたとえ怪我をしても、ましてや死んだとしても仕方ないと思っているのだろうか?
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