杭打ちの現場に来て一月。
近隣の顔も覚えてそれなりに上手くやっている。
隣のマンションの管理人Xとは冗談を言い合えるような仲にまでなった。
管理人X、正確に言うと管理と清掃を担当している70過ぎの雇われ人。
午前中でほぼ清掃の仕事を終えると、午後は時間を持て余しているのか、私の傍までやって来てぺちゃくちゃと話し始める。
「昨日はゴルフだったよ」と私の横で素振りの真似を始めた。
「健康で羨ましいですね」
「俺なんか、ゴルフ場行ってもカートには乗らないからね。歩くんだ」
「へ~え、自分なんか、階段上るのだって一苦労で、駅では必ず階段を避けてエスカレータで移動するんです」
「ダメだねぇ。俺なんかエスカレータに乗っても絶対に立ち止まらない。ずっと歩いてるから」
「エスカレータ、歩いちゃいけないんじゃないですか?」
ついつい余計なことを言ってしまうのが私の悪いところだ。
「バカだなぁ、右側に決まってるだろ」
右でも左でもダメだと思うけど。。。
「一昨日、38度の熱が出たから、ゴルフ行けるかどうか心配だったけど、何とか行けたよ」
「それってコロナかインフルエンザじゃないですか?」
「ただの風邪だよ」
「検査しました?」
「いや」
「人にうつすとか考えなかったんですか?」
「ただの風邪だって。俺は基礎疾患はないし、ワクチンだって一回も打ってないから」
あんたはそれでいいでしょうけど。。。
そう言うとおもむろに、管理人Xは煙草を出してそれに火をつけた。
「煙草吸うんですか?」
「煙草だけはやめられないね」と携帯用の灰皿を取り出した。
「灰皿持ってるんですね」
「当り前だろ。マナーなんだから」
管理人Xは、美味そうに煙を吸って吐き出した。
「品川区の駅周辺は路上喫煙禁止ですけど」
「灰皿を持ってるから大丈夫だろ」
「灰皿を持ってれば、どこで吸ってもいいんでしたっけ?」
「……ん?」
マナーを語る前にルールを守れって。。。。
近隣とは仲良くしないといけないので、
「な~~~んちゃって、冗談ですよ。真に受けちゃいました?」とその場を取り繕った私でした。。。(-“-)
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